結局、両親の提案の『お見合い』はやんわり断り、私はまたいつもの生活に戻っていた。
9月に入ると、カフェスクールも実技演習が本格化し、少しずつだけど未来予想図が浮かび上がるようになって来た。
有名バリスタでもある講師の先生に『焙煎』が上手いと褒められたり。
一流ホテルのシェフでもある講師の先生に『食材選び』が上手いと褒められた。
まぁ、全てが上手くいっている訳じゃないけど、頑張った分だけ努力が身になって行くのが分かる。
私は充実した生活を送っていた。
9月下旬。
久しぶりに実家に行くと、私宛の封書が1通届いていた。
それは、封を切る前から中身がどんなものか分かるもの。
「寿々、どうするの?」
「………呼んで貰ったんだから、行かないと」
「…………大丈夫なの?」
「………うん、もう吹っ切ってるし」
「……そう」
封書の送り主は、地元の友人。
中高と一緒だった中曽根智香ちゃんからの結婚招待状だった。
私がする筈だった結婚式に彼女を招待していた。
自宅が近い事もあり、昔はよく遊んでたんだけど……。
心から祝ってあげないといけないのに、今の私にはまだ難しいみたい。
結婚式までにはちゃんと心の整理をつけておかないと……。



