ライラックをあなたに…



私の両親はお見合いで知り合い、そして……結婚した。


新婚当初はぎこちなかったらしいけど、私を授かってからは夫婦円満に過ごして来たと祖母から聞いた事がある。

今の時代、婚活ブームでお見合いで結婚する率も増えつつあるって聞くし……。

でも………。


「お見合いしたからって、すぐに結婚しなくたっていいじゃない」

「へ?」

「お母さん思うんだけど、今の寿々には………傍で見守って支えてくれる人が必要だと思うの」

「…………」

「勿論、無理にとは言わないわ。お父さんとお母さんだっているしね。だけど、一生1人って訳にはいかないでしょ?寿々は、1人っ子なんだから。お父さんとお母さんがいなくなったら……1人で生きて行かないとならないのよ?………お父さんとお母さんは、それだけが心配なの」



切実に訴えられては返す言葉も無くなってしまう。

いい歳した大人が、老後の心配まで両親にさせているなんて。


私は視線を逸らしたまま、そっと呟き始めた。


「正直、『恋愛』する事が怖いんだと思う。あんなにも想い合っていた人に簡単に捨てられて……。もし、またいいなぁって思える人が出来たとしても、同じように愛せるか自信が無い。それに、尽くせば尽くすほど自分が惨めになるんじゃないかって恐怖観念が付き纏う。そんな風に思っているうちは、相手の気持ちを理解する余裕がないと思うし、相手にも失礼だと思うの。だから………」

「………そうね。怖くなって当然よね?それほどまでに彼を愛してたんだもの。そう簡単には行かないわよね」

「………ごめんね、お母さん」