ライラックをあなたに…



「じゃあ、いつもの場所で」

「うん」

「美味しかったよ、ご馳走様」


彼は食べ終わった食器をキッチンへ運び、洗面所へと向かって行った。


本当にどうしたのかしら?

口数も少ないし、表情も暗かったし。

仕事で余程疲れているのね。


私は朝食を急いで食べて、出勤準備に取り掛かった。


勿論、彼とは出勤も別々だし、帰宅も別々。

会社帰りに出掛ける時は、最寄の駅でなく、1つ手前の駅で下車する。

そして、駅からほど近いカフェで待ち合わせ。


今日も仕事帰りにそのカフェで待ち合わせする事になった。



年度末は決算月という事もあり、仕事の締め切りが重複する。

ここのところ毎日、自分のデスクで昼食を取りながら仕事をしている。


早く、来月にならないかしら?

そしたら、新入社員の子に雑用をお願い出来るし、念願の彼との結婚式が控えているんだもの。

これ以上ないくらい、来月が待ち遠しい。

桜が咲くと同時に、私の人生も満開に咲き誇る。


何だか、考えただけで顔が綻ぶ。

仕事だけは手を抜かずにしっかりしないと。