ライラックをあなたに…



一通りの開店準備が終わり、大将が暖簾を出すと女将さんがお茶を淹れてくれる。


「はい、寿々ちゃん」

「ありがとうございます」


これはこの店『源ちゃん』ならではなのかな?

開店前の小休止。

忙しくなる前にひと息入れておくという、大将と女将さんのゲン担ぎらしい。


カウンターに腰掛け、女将さんが淹れてくれたお茶を口にすると、隣りに一颯くんが腰を下ろした。


「大将。今日って、宴会か何かが入ってましたっけ?」

「ん?あぁ、昨日急に決まってな。奥座敷に20名ほどの宴会が1組入ってる」

「うわぁ~忙しくなりそう」

「…………だな」


大将と一颯くんの会話。

阿吽の呼吸みたいで紡がれる。


何をどうしたら宴会が入ってるって気付いたのかな?


私はそんな事を考えていると、私の考えを察したのか、一颯くんが口を開く。


「宴会客と一般客の区別が分かるように皿の絵柄が違うんだよ」

「えっ?」

「お会計がし易いように女将さんが決めたルールなんだよね」


そういって絵柄の違う皿を見せてくれた。

なるほどねぇ。

手書き注文だから間違わない為のルール。


間違わないように目に焼き付けておかないとね。