「私の両親への謝罪はなるべく早くにお願いします。時間が経てば経つほど、事が大きくなりますので……」
「それは分かってる。今日明日にでも行こうかと思ってるんだが、一緒に行かないか?」
「は?………冗談は止めて下さい」
「………………そうだよな、ごめん」
ありえない。
両親に顔向け出来ない状態なのに、何故、私が彼と行かないとならないの?
両親の悲痛に満ちた表情を私に味わえって?
冗談は程々にしてよ。
両親へ彼が謝罪をすれば、間違いなく連絡が来る。
私が説明するのはその後でも遅くないでしょ?
それじゃなくても、気が重いのに……。
「書類や必要な物があれば、実家に郵送して下さい」
「…………分かった」
購入したマンションの名義が連名になっているし、保険とか記入する書類が沢山ある。
一颯くんのマンションに住んでいる事は話せない以上、受け取りは実家が妥当だと思った。
万が一、会社で受取りしている事を誰かに知られたら、それこそ一大事になりそうだもの。
私は一切、視線を逸らす事無く……。
「ご結婚、おめでとうございます」
5年間の思い出を笑顔に変え、彼に贐の言葉を贈った。



