「寿々」
「………」
「どこで寝泊まりしてるんだ?」
「………」
「もしかして、この間のあの男の家に?」
「………」
「マンションに戻って来ないか?ちゃんと俺が出て行くから」
小さな声でも響く場所。
プライベートな事を話す場所には相応しくない。
けれど、場所がどこであれ、彼とこれ以上同じ空気を吸うのは苦痛でしかなかった。
私は意を決して口を開く。
「マンションへは戻りません。友人の家に居候させて貰っていますので、お気遣いなく」
「友人って誰の事?」
「………それを聞いてどうするおつもりですか?」
「どうって……」
私は感情を殺して、淡々と言葉を紡いだ。
だって、そうでもしなければ今にも膝から崩れそうな程、苦しくて……苦しくて……。
両手をギュッと握りしめて、気合を入れた。
俯き加減の視線をゆっくり持ち上げ、彼の瞳を真っ直ぐ見つめる。
そして………。



