「あ……あはは〜、落としちゃった」



そんなわざとらしい笑いを溢し、床に転がる水筒をしゃがんで拾う。


やってしまった。

動揺してるの丸分かりだし……。


いや、別に隠すつもりとかではなかったけれど……。



「……え、千沙ちゃんって彼氏いるの⁉」



麻衣子の驚いたような声が頭上から聞こえた。



「うん、いるよ」



私は平静を装い、水筒をカバンに直しながら答える。



「わ……私、知らなかったよ⁉」



麻衣子が知らないのも当然だと思う。


麻衣子とよく喋るようになったのは、2年になってから。


今は高校2年生の七月。

つまり仲良くなったのは、案外つい最近のことなんだ。



「いつから付き合ってたの⁉」



麻衣子が興奮気味に聞く。



「3年前から、かな」


「ええっ⁉」



さらっと答えると、麻衣子はこれでもかというくらい目を見開いた。



「そんなに長く付き合ってる彼氏がいるの⁉」


「うーん……長い、かなあ?」


「いや、長いでしょ!」