下に下りて居間のほうを覗くと、お母さんが出勤の準備を終えて食器を片付けているところだった。

出来るだけ顔を合わせないようにと、とりあえずトイレに直行し、お母さんが出て行くのをじっと耳をすませて待った。


足音がトイレの前を通り過ぎて玄関のほうへ向かい、声がした。

「行って来るね」


『うん』

ワンテンポ遅れて、たった一言そう返した。
何となく後ろめたい気持ちが湧いて、じわじわと打ち寄せて来る。

玄関が閉まり、バタンという車のドアの
音がするのを確認すると、トイレから出た。

ハァ〜

後ろめたい気持ちと、学校のことを何も言われなくてほっとする気持ちが混ざった大きなため息。


食卓について、ただぼんやりとパンをかじる。
家の中に静けさが流れる。
それに乗って漠然とした不安が私の周りでグルグルと渦巻きながら流れている。