「や……な、なんも」
「嘘つかないでよ!今、香坂って言った
!?言ったよね?言ったでしょ!」
まるで言ってない、とは言わせない、と
いうような雰囲気。
いやまあ、言ったんだから仕方ないけど
、これはどうやらもう、誤魔化せないら
しい。
「あの……わ、忘れて!」
だけど事実を認めることも出来なくて、
口を突いて出てきたのはそんな言葉だっ
た。
萌は、はぁ?というように怪訝な表情を
浮かべて、首を傾げている。
「忘れて……って?」
「わ、私が今、訊いたことも言ったこと
も全部!全部忘れて!」
「えーっ!?やだよそんなのズルい!」
私がそう言うと、それは不公平だと言わ
んばかりに声を張り上げた萌。


