私は、吹き付ける北風に震えながら、重
たい足取りで家へと向かう。



ダメだ。頭ん中、ぐちゃぐちゃすぎる。



どんな行動が正しいのかもわからないし
、自分の気持ちもわからない。



ただ、胸の真ん中の辺りが、とても苦し
い。



まるで鋭利なナイフを突きつけられたか
のように、鋭く痛んで。香坂に突き放さ
れた事に、こんなにショックを受けてる
なんて。



は、と小さな笑いが零れる。



変なの。


最初は香坂のこと、大嫌いで仕方なくて
、すっごい鬱陶しかったのに。



今じゃ、こんなにも大きな存在になっち
ゃってるんだ。



「……希美?」



家へと帰る途中、不意にそんな風に名前
を呼ばれて。