そう俺に謝った母さん。
俺は大丈夫だ、というように首を振った
。
そりゃ誰だって動揺するだろう。いきな
りそんな事を知らされたら。
「……怖かった。あの人に、健二さんを
取られるんじゃないかって、怖かったの
」
そう言って声を震わせた母さんを、俺は
ずっと護っていこうと思った──。
そして、今年。
父さんが本社に戻ってくるように指示さ
れ、単身赴任で行こうとした父さんだっ
たけど、母さんも着いていく、と言った
。
少し不安そうにする父さんに、母さんは
微笑んでいた。もう、大丈夫だと。
◆◆◆
「それでこの高校に来たら、偶然、お前
に会ったんだよ」
全てを話し終えて、俺は香坂を見た。


