そうはっきりと言い切る父さん。
「悪いけど、香坂の誘いには乗れない。
……子供のことは、苦労をかけて、悪い
と思ってる」
「……っ悪いと思うならどうして…!」
「俺は、千枝を護りたい。……千枝を、
愛してるんだ」
そう言って、頭を下げた父さん。
そんな父さんに、女はみるみるその顔を
怒りに歪めたかと思うと。
「もういいわよ!」
そう言って、そのまま玄関へと歩いてい
った。
残された男の子は、チラリと俺らを一瞥
すると、ペコリと頭を下げて、リビング
から立ち去ろうとした。
「──待ってくれないか」
そんな男の子を止めたのは、父さんで。
男の子は足を止めると、父さんを見上げ
た。


