だけどもやっぱり男の子は、何の感情も
読み取れない表情で、どこか遠くを見つ
めていた。
まるで自分には関係ない、とでもいうか
のように。
「ねえ健二さん。どうせあなたとその女
は、このあとギクシャクするだけよ。私
と一緒に来て?」
ギクシャクするだけよ、なんて。──ギ
クシャクさせてるのはあんたのくせに。
「ねえ、一度は愛し合った仲でしょう…
…?」
そう言って、女が父さんに触れようとし
た時。
──パシッ!
「触らないでくれないか」
父さんはその手を払って、その女を冷た
く見下ろした。
その瞳には、僅かな怒りが見られた。
「俺と千枝が上手く行くか行かないかは
、君が決めることじゃない。俺の行動と
気持ち次第だ」


