「そんな、お金なんて要らないわ。……
私と一緒に居てさえくれれば」
……どういうことだ?
母さんがビクリと震えたのがわかって、
俺はやっとこの女の言葉の真意を汲み取
った。
……この人は、父さんに自分といて欲し
いと頼んでいるのか。
俺や母さんを裏切って、自分と一緒にな
ってほしいと。
ふざけてる、とぎり、と歯ぎしりをする
。
俺達の前で、なんの躊躇いもなくそんな
事を言うなんて。
「……馬鹿なこと言うのはよせ」
「馬鹿なことなんかじゃないわよ。あな
たとその女の子供とは、九年間一緒にい
るんでしょう?だったら今度は、私と禊
と、九年間一緒に居てくれたっていいじ
ゃない」
どうやらあの男の子は禊と言うらしく、
女は男の子の肩を抱いて微笑んだ。


