小さく笑ったまま、そう答える女。
なんで女がそんなに自信で満ちているの
か、何にそんな自信を持っているのか、
わからなかった。
ただ、女の後に続いて入ってきた母さん
がすごく苦しそうな顔をしているのが気
になって、胸が痛んだ。
あの能天気でいつも笑顔を絶やさないあ
の母さんが、傷ついた表情を浮かべるな
んて、初めてで。
そんな母さんを見た父さんの顔も、すご
く辛そうで。
そんな二人を見ているのが嫌で、明らか
にその原因になっている目の前の女が、
俺はすぐに嫌いになった。
「香坂、もう俺たちには関わらないで欲
しいと言っただろ?」
「あら。だって緊急ですもの。そんなの
関係無いでしょう?」
そう言うと、フフン、と笑う女。
俺は何故だか、とても嫌な胸騒ぎを感じ
た。
「……健二さん……」


