唇を引き結んだまま、小さく頷く。
とたんに、ドキドキしてくる心臓。熱く
なっていく頬。
彼の事を思い出しただけで、こんなにも
甘酸っぱい気持ちに満たされる。
やっぱり、好きだ……。
「……出ようか」
香坂が急にそう言って、まだコーヒーも
残っているのに、伝票を片手にレジに向
かってしまった。
そんな香坂の声が、どこか怒ったように
も聞こえて。
きっと気のせいね……。
そう自己完結させて、自分も席を立ち上
がった。
支払いを済ませて、外に出た香坂に駆け
寄る。
「香坂!ケーキ代……」
「いらない」
ケーキ代を渡そうとすると、小銭を握っ
た手を掴まれ。