「本当にバカなんだから」


そう言いながらも、シュンと落ち込む橋本君を可愛いと思う自分(アタシ)だって、充分過ぎる程のバカだと思う。


「明日……」


「え?」


だから…


「遊園地も動物園も嫌だけど、映画館なら行ってもいいわよ」


とりあえず、少しずつ寄り添ってみようか。


「その代わり、観るものは絶対に譲らないわよ。今、ちょうど観たいのがあるから」


「は、はいっ!!」


心をくすぐる照れ臭い雰囲気に耐え切れなくて、橋本君が持っているチョコを奪い取る。


キャンディーのように透明なセロファンに包まれた星型のそれは、バレンタインに目にしたあの歪(イビツ)なチョコを思い出させた。