「な、何よ……」


「繭さん、顔真っ赤ですよ」


悪戯に微笑む橋本君がやけに大人びて見えて、どうにもからかわれているような気分になる。


恥ずかしい事を言っている自覚が無かった訳じゃないけど、それを突き付けられてムッとした。


「……もう二度と、名前で呼んであげないわよ」


「えっ!?怒らないで、繭さん!俺が一番好きなチョコあげますから!」


さすがに衝撃が大きかったのか、橋本君は悲愴(ヒソウ)な表情でスーツのポケットから小さなチョコを出した。


「チョコ嫌いなあたしには嫌味でしかないわよ、それ」


「うっ……!」


橋本君は、ションボリとうなだれてしまった。