「その顔は完全に忘れてただろ」


クッと笑った坂口君は、『浅木らしいね』と付け足した。


「出来れば、不参加がいいんだけど」


周囲に人がいない事を確認しつつ声のトーンを落とせば、彼が眉を小さく寄せて笑った。


「お前、毎年同じ事言ってないか?」


坂口君は、こんなあたしにも気軽に声を掛けてくれるから話し易くて、彼とだけはわりとこんな会話もする。


「まぁ、不参加は無理だって事はちゃんとわかってるだろうけど、逃げるなよ?」


年度末の飲み会だけは強制参加だから、こればかりは仕方ない。


「適当に抜けるわ」


ため息をつけば、坂口君が一瞬だけ考え込むように視線を上げた。