「あっ、繭さーん!おはようございます!」


翌朝、営業部の前で鉢合わせた橋本君はこちらが拍子抜けするくらいいつも通りで、一瞬呆気に取られてしまった。


「あれ?繭さん、聞いてます?」


あまりにも締まりの無い表情の彼を見ていると、中々寝付けなかった自分がバカみたいで。


結局2時間程しか眠れなかったあたしの睡眠時間を、今すぐにでも返して貰いたい。


「あっ!ちょっと、繭さん!無視なんて酷いなぁ」


最早(モハヤ)、毎朝見る光景を珍しがる同僚は一人もいない。


敢えて言うのなら、数人の女性社員からの嫉妬混じりの視線に僅かなストレスを感じてしまうのが、悩みの種だったりする。