【あなたと私で創るものがたり】

 「片眼と、声……奪っておいて、それは、ない」

 斉藤は口の端を吊り上げ、嘲笑気味にクックッと笑った。

 しばらく沈黙が続いたが、相手の男から答えは聞き出せそうになかった。

 いつも気に病む性格の自分とは違い、明るく誰にでも接していた彼に半ば憧れすら抱いていた事が今では恨めしい。

 たったいま自分に向けられている眼差しは、バカにしたものでしかなかった。

 事故の目撃者はおらず、証拠など見つけられるはずがない。だからただ、本人に訊いてみたかったのだ。

「こたえ、ろ。ど……して」

 それでも、男は答えない。

 苛立ちは増していき、拳が微かに震えてくる。