泣けないピエロが泣いたよる

北風が、僕の目の前を通りすぎていく。


その流れに釣られて、再び昨日のあの光景思い出しそうになるが、それでも必死に打ち消した。



拳をぎゅっと握りしめる。


爪が食い込むほどに、強く強く。




十秒後、僕は振り返ると、ベンチの上の紺色のバッグパックから黒いキャップを取り出して、誰とも目が合うことのないように、そして同時に自分の表情を隠すため、それを深くかぶった。




相変わらず、風は強く吹いている。



いつまでも動けずに突っ立っている僕に対して、時間は気味の悪い嘲笑を浮かべながら駆け抜けていく。




今日は、どこへ行こうかな。



早くも途方に暮れてしまった僕は、それでも、鉛のように重い足を、一歩前へと引きずって歩くのだった。