巫女の責任を果たすことのみ考え、どれほど周囲の人々を傷つけて来たか……朔夜自身は一度とて省みることもなかった。



「――待った。ちょっと、待った。方法はある……玉が、そう言ってる!」


海が、突然胸を押さえ呟き始める。

そして……これまた出し抜けに、湖畔の水際ギリギリまで駆けて行くと、天空に向かって手を翳した。


「宝玉よ――この手に!」


そう叫んだ瞬間、『翠玉』はボート小屋の残骸から、『碧玉』は蓮の近くから、『紅玉』は水中から、『黄玉』は対岸の森の中から――一斉に姿を現して海の手に集まった。


「『月宮天子』の名において命じる、獣人族の魂を大神島に連れ戻せ!」


四つの玉はそれぞれの方向に飛び去った。

『翠玉』は氷月を、『碧玉』は天泉を、『紅玉』は白露を、『黄玉』は流火をそれぞれ追いかけ、その胸に飛び込む。すると、その体は一瞬で霧散した。靄の中から光の玉が中空に舞い上がり……それが四個揃うと、一斉に、西の空に飛び去った。


その光は後日、「千並湖付近でUFO目撃」或いは「千並湖に隕石落下」などと、マスコミは報じたのであった。




~終章へ~