「……それは分かりません。でも弟が言ったようなことを、冬哉くんはしてません。それだけは……本当ですからね」 京香さんはそう言った後、丁寧にお辞儀をして部屋を出ていった。 ……あっ! すごく大事なこと忘れてた! 私は急いでドアを開ける。 「京香さん!婚約は……してなかったんですか?」 委員会があったあの日、橘くんに言われた婚約のこと。 京香さんは、パッと優しい笑顔で振り向いたと思ったら…… 「あのバカ……!」 そう言って眉をしかめた。 「……へ?」