「……侑梨ちゃんさ、橘京香って知ってる?」 トントンと私達2人の階段を上る音だけが響く。 そんな静寂の中、橘くんが突然口を開いた。 「橘…京香……」 私は独り言のようにつぶやくと、ほぼそれと同時に思い出した。 ……京香さんだ。 京香さんの綺麗な笑顔が頭にポンと浮かんだ。 「うちで働いてくれてるメイドさんの京香さん?」 私が首を傾げながら聞くと橘くんはたてにコクンと頷いた。