「さ、そろそろ帰るか」
宇佐美先輩はそう言ったけれど、私は反応せず、黙って俯いた。
なんだか、まだ帰りたくない。
そう思ってしまった。
彼女でもなんでもないただの後輩がそんなこと思うのは虫がいいけれど……
もう少しだけでいいから、とそう願った。
「やっぱり、宇佐美先輩へのお礼なのに、奢ってもらうなんてちょっとモヤモヤしちゃいます!ちょっと待ってて下さい!」
私は走って自動販売機に向かい、オレンジジュースを二本購入した。
私って、いつからこんな欲深くて、ずる賢い人間になっちゃったんだろう。
そうさせた宇佐美先輩って、本当に……
「ずるい人ですね。はい、これ」
「へ?」
「お礼です!オレンジジュース、嫌いですか?」
「いや、ジュースの中で一番好き」
「良かったです」
ああ、もうこのままずっとここに居たい。

