ミーン ミーン ミーン・・・
 夏。せみの大合唱がそこらじゅうに
 響きわたる。
 公園では、ちびっこ達が元気に遊んでいる。
 私はベンチに静かに腰掛けていた。
 何することもなく、ただぼんやりと一点を
 眺めていた。

 そのときボールが転がってきた。
 小さい頃は自分もよく遊んだな、と
 思い返すと懐かしい。
 足で蹴って返そうと思い、ボールに
 足をのばした。が・・・
 「あれ?・・・」
 ボールは私を無視してベンチの後ろの
 草むらへ一直線。
 「やっぱそうだよね・・・」
 誰かにきいてもらうこともなく、
 悲しげに一人で呟いてみた。


 斉藤梨花 15歳。高山中学校3年生
 ・・・だった。
 性格はいたって普通。
 特にめだってもないし、だからといって
 もの静かなわけでもないと思う。
 普通でありふれている。
 でも、そんな私のたった一つだけ普通
 じゃないこと。
 私は、死んでいる。