ドアのほうから、聞き知った声がした。 毎日どこかの時間で必ず聞く声。 そして、親しい人の、声。 「…何の用ですか」 相手を見ずに、低く尋ねる。 「おっと、いきなり手厳しいなぁ」 「おちゃらけはいいです。用件を聞いてるんですよ」 すると相手は、はぁ、とため息をつき、真面目な声で切り出した。 「…なんでお前がこんなところにいるんだ、千来。……いや…」 あたしは、顔をあげて声のするほうを見る。 「…優来」 木崎重吾。 本名、咲島重吾。 あたしの血の繋がった、実の父親。