「…北斗、どうしたんだよ。何があった」
冷静な夕哉の声が、なぜかかんに障る。
「……なんでもない」
「なんでもなくないだろ。千来はまだしも…お前があんなに感情的になるなんて」
「…千来の態度が、いつもと違った。木崎さんを、仇でも見るように睨んでた」
千来があんなになる理由が分からない。
俺は、俺たちは、千来のことを何も知らない。
「……千来の事情も、過去も、木崎さんに対して、あんな風になる理由も。…何も、知らない」
何が分かるんですか、か…。
確かにそうだ。
千来のことを何も知らないのに、あんなことを言ってしまった。
あの泣きそうな顔が、頭に焼き付いて離れない。
千来を、傷つけてしまった。

