夏休みの魔法




「…北斗、どうしたんだよ。何があった」


冷静な夕哉の声が、なぜかかんに障る。


「……なんでもない」

「なんでもなくないだろ。千来はまだしも…お前があんなに感情的になるなんて」





「…千来の態度が、いつもと違った。木崎さんを、仇でも見るように睨んでた」




千来があんなになる理由が分からない。


俺は、俺たちは、千来のことを何も知らない。





「……千来の事情も、過去も、木崎さんに対して、あんな風になる理由も。…何も、知らない」



何が分かるんですか、か…。



確かにそうだ。


千来のことを何も知らないのに、あんなことを言ってしまった。





あの泣きそうな顔が、頭に焼き付いて離れない。





千来を、傷つけてしまった。