それでも、そんな千来の表情を見ても、俺は苛立ちを隠せなかった。
「…お前にあの人の何がわかるんだよ…」
「なんで北斗くんはそんなに執着するんですか。憧れの先輩だからですか?」
…憧れの、先輩だから…?
だから、俺は千来の木崎さんへの態度に執着してるのか?
「…違う…俺は、お前が芸能界でやっていくために…」
「違わない、自分の憧れの先輩だから、僕が嫌いなのが嫌なんですよ」
「違う」
「北斗くんがどう思おうと、僕はあの人を好きにはなれません」
俺の言葉なんて、受け付けない。
「いい加減にしろよ、千来…!」
キレそうになったとき。
「北斗くんに、僕の何が分かるんですか!?」
千来が、本当に泣きそうな顔で、そう怒鳴ったから。
そのまま、部屋を出て行ったから。
俺は、追いかけることもできずに、突っ立っているしかできなかった…。

