夏休みの魔法


それでも、そんな千来の表情を見ても、俺は苛立ちを隠せなかった。


「…お前にあの人の何がわかるんだよ…」


「なんで北斗くんはそんなに執着するんですか。憧れの先輩だからですか?」


…憧れの、先輩だから…?


だから、俺は千来の木崎さんへの態度に執着してるのか?



「…違う…俺は、お前が芸能界でやっていくために…」



「違わない、自分の憧れの先輩だから、僕が嫌いなのが嫌なんですよ」


「違う」


「北斗くんがどう思おうと、僕はあの人を好きにはなれません」



俺の言葉なんて、受け付けない。


「いい加減にしろよ、千来…!」


キレそうになったとき。








「北斗くんに、僕の何が分かるんですか!?」








千来が、本当に泣きそうな顔で、そう怒鳴ったから。




そのまま、部屋を出て行ったから。






俺は、追いかけることもできずに、突っ立っているしかできなかった…。