「…千来、芸能界は上下関係が大切なんだ。この事務所はあまり意識していないし、木崎さんも優しい人だからよかったけどな」
「……優しい人…?」
少しだけ、千来が反応した。
「そうだぞ~!木崎さんはすっげぇ優しい人なんだ!!アドバイスくれたり、話聞いてくれたり」
陽汰が普段通りの明るさで、話に入ってくる。
「陽汰、お前空気読め」
ため息をついて、水月が言った。
「…優しい、なんて、有り得ない…」
ここにいる誰もがきっと、千来の言葉に耳を疑った。
「優しいなんてことない、絶対に」
俺の目を見て言った千来の目は、睨んでいた。
ああ、この瞳だ。
俺が惹かれて、でも見透かされそうで怖い、この瞳。

