夏休みの魔法


「…なら強制的に見せてもらうだけだ」


「え!?」


いきなり腕を掴まれて、机の下から引っ張り出された。


「嫌ですよっ!」

抵抗したのに、北斗くんの手があたしの顔を挟んだ。


「…はい、残念」


グイッと近づいた顔と顔。


目の前には、ニヤリと笑った北斗くんがいた。



でも、次の瞬間。


北斗くんの表情は、驚きに変わった。





…ほら、やっぱり似合わないんだ。


だから嫌だったんだ、北斗くんに見せるの。





好きな、人だから。



……恋愛としての意味じゃない、とは思うけど。




「…何か言ってくださいよ…」


いたたまれなくなって、あたしは顔をそらした。


「あ……悪い。いや、だってまさかそんなに似合うとは思ってなかったし…そこら辺の芸能人よりも全然可愛いし」


「いえ、それは絶対あり得ませんから」



「いやほんとだって。…マジで、女の子だな…。でも、千来はこんなにメイクしなくていい」


「だから言ったじゃないですか、濃いメイクは似合わないって」

北斗くんから離れて、鏡の前へ行く。


「…似合ってるけど…さ」


「なんですか?」


「いや、その……」


北斗くんはあたしから視線をそらして、顔を真っ赤にさせていた。


「……着物とか似合いそうっていうか…。…なんか、エロい」



着物似合いそうって…


エロいって…




「そ、そんなこと言われても嬉しくないです!!!!」



恥ずかしいわ!!