夏休みの魔法


「あらあら~、本当に女の子みたいね!じゃあ次は濃くしましょうか!」


「う…ほんとにしますか?僕濃いメイク似合わないんですよ…」


「ええ、あなたはスッピンかナチュラルで十分よ。だけど、とりあえず見ときたいの」


見ときたいって…ほんとに似合わないのに。


「…やってみてよ、千来」


「北斗くんまで!?」


「いいじゃん、見たいし」


「そんな意地悪な顔で笑わないでください~!!」


もう、仕方ない!


「やりますよ!!でも、できるまで入ってこないでくださいね!」





それからあたしは即行メイクをした。


マスカラはさっきよりずっと多くつけたし、アイラインも濃くひいた。


…目はぱっちり、グロスたっぷり…。


「…気持ち悪い…」


自分で自分が気持ち悪い。


「どう、できた?」


「北斗くん!?ちょっ、待ってください!」

制止の声をかけたのに、ドアノブが動いた。


「俺だけだよ、他は撮影始まったし…」

北斗くんが入ってきてしまった。


心の準備ができてないあたしは…。




机の下に隠れました。




「千来~。なんで隠れるんだよ」

コツコツと、足音が近づく。


「だって…!似合ってないし、気持ち悪いんですよ!」


「あのなぁ、今日の俺のかっこう知ってるか?執事だぞ?…ほんと、キャラじゃないっつーの」


いやいやいや、あなたの執事はすっごく似合ってますけど!?



「せーら。出てこいよ。今のうちだぞ?俺しかいないんだから」


「…嫌です」


どちらかと言えば、北斗くんだから嫌だ。