夏休みの魔法


俯くあたしを、水月くんは心配そうに覗き込む。


「どうした、具合でも悪いのか?」


「いえっ、なんでもありません」

「そうか、それならいいが…」


心配かけちゃ、だめだ。





あたしは、これからも嘘をついていかなきゃいけないんだ。



だから、夏休みの前日。


START事務所に入ると決めた日に、決めたんだ。






夏休み中は、絶対に泣かないって。







辛くったって、苦しくったって、泣かない。




それが、あたしがみんなを騙す代償。






こんなちっぽけなこと、代償にもならないけれど。







……それよりも、北斗くんを…





救いたいんだ…。