夏休みの魔法


桜木さんは他のメイクさんに呼ばれて、メイク室へ戻った。



あたしは、水月くんと二人…。



そういえば…


「水月くんも、綺麗な顔してますよね…」

「は?」


隣で何やら本を広げている水月くんを見て、ほぼ無意識にそう呟いていた。


本から目を離して、怪訝そうな顔で見られる。


「あ、ごめんなさい!つい本音が…」


「別に怒ってない。桜木さんにも、初めはそう言われた」

だって、本当に綺麗な顔立ちなんだもん…。


笑顔よりも無表情が似合うっていうか…クールっていうか…。


目も切れ長でちょっとつり目だし。

あ、黒縁メガネ似合いそう…!!



「…千来」

「はい?」




「……お前、無意識なんだろうが、全部声に出てるからな」




………………………………え?



「うそぉっ!?ご、ごめんなさい!!!!」


怒られる…!?


ビクビクしてたら、ふっと笑い声が聞こえた。



「お前はおもしろいな。見ていて飽きない。…北斗が気に入ったのも分かる」

笑顔で言われて、少し驚いた。


…にかってした笑顔も、十分似合っていたから。



「…バカみたいに言わないでくださいよ」


「ほめてるんだよ。…少しずつ、北斗が変わってるように感じるんだ。お前のおかげだよ」


…そんな風に、笑って、そんなこと言わないで…。



「…僕、は…」



あたしは、何もしてない。

逆に、あたしは…





「千来?」