夏休みの魔法


スタジオに着くと、遅いとちょっと怒られた。


これから雑誌の写真撮影。

服を替えて少しメイクもするのかな?


メイクなんてしなくても、十分綺麗な顔してると思うけどな~。




「じゃあメイク室きて~!」


順番にメイクをしてもらうらしい。



…ヒマだな…。


ぼーっとイスに腰掛ける。




「あら、あなた…新入りちゃん?」


「へっ?」

急に声をかけられて、声裏がえった…。

見ると、オネェっぽい人が立っていた。



「この子、COLORFUL付の見習いです」

隣にいた夕哉くんがフォローしてくれた。


「初めまして、木崎千来です」

慌てて立ち上がって、自己紹介する。



「初めまして~。私は桜木です、よろしくね」


人懐っこい笑顔を浮かべて、手を出される。

うわぁ~、たぶんほんとにオネェだ!!

出された手を握り返しながら、そう思った。


「千来ちゃん、あなた…」


真面目な顔になった桜木さんに、何を言われるか緊張しながら待った。




「すごく可愛いのね!!やーん、お肌なんてつるつる!うらやましいわ~!何かやってるの?」



…そんなことかいっ!


「いえ、特には何もやってませんよ」


「あらっ、ますますうらやましいわ!!…今日はどんなメイクしてあげようかしら…!」

あの、乗り気になっているところ悪いんですが。



「桜木さん、そいつメディア露出禁止なんで。撮影はしませんよ」



「水月くん!?メディア露出禁止って…?」


「俺たちもよく知らないんですけど、とりあえず訳ありらしいので」


「もったいないわ~!せっかくこんなに可愛いのに!」


男に可愛いって…。

「あはは…。ありがとうございます」

苦笑いしかできない…。