夏休みの魔法


千来が、怒った。

いきなりすぎて、何を怒られているのか、理解できなかった。


「なんで俺なんかって言うんですか!?北斗くんは自分に厳しすぎです!」


その大声で、みんながキッチンに来た。

「どうした」


「夕哉…なんでもねぇよ」


「なんでもなくないです!認めてもらいたいと思わないんですか!?」

なおも言いかかる千来に、苛立ちとともにうらやましさを覚えた。


「…お前になにが分かる」

自分でもびっくりするくらい、低い声が出た。


「分かります!だって僕は…!!」


その続きを、聞くことはなかった。

千来が言うのを躊躇して、その隙にみんなが俺たちを止めたからだ。



千来は泣きそうな顔で俺をじっと見ている。

…泣きたいなら、泣けばいいのに。


泣くのかな、と思ったけど、千来が発した言葉は、謝罪だった。



「…ごめんなさい…」




「別に、お前が言いたいことは分かる。正しいことも分かってる。でもな…」


千来の泣きそうな顔を見てると、俺まで辛くなる。

なんで…?


泣きそうになるのを悟られだくなくて、唇をかみ締めた。





「俺は、お前みたいに純粋じゃない。お前みたいに強くない」