夏休みの魔法


…本当に、表情がくるくると変わる。

見ていて飽きない。


「んじゃ、俺とお前もだいぶ違うな?」

「へ?」


何を言われてるか、分からないのか?


「年齢だよ。4つ違うし、中学生と高校生だろ?」

「あ……そうですね…」


千来は少し悲しそうに微笑んだ。




「憧れの人に近づけないのは、辛いですね」




「…俺のこと?」

「はい」


「……俺なんかには、すぐに近づけるよ。追い越されるのも、遠くないだろうなぁ」


俺は、きっと俺の憧れには、近づくこともできないだろうけど。



すると、それまでせわしなく動いていた千来が、ピタッととまった。


「千来?」


「……んなこと…すか」


「え、なんて?」


聞き取れなくて、水道をとめた。





「なんでそんなこと言うんですか!」