夏休みの魔法


「千来、どうだ?」

「わっ、北斗くん!?」


コロッケを揚げているところだったのか、驚いてこっちを見た。

「悪い、危なかったな」

「だ、大丈夫です…」

「もうできそう?」

「これが最後です」


横を見ると、あげあがったコロッケが綺麗に並んでいた。


「うまそ…。お前ほんとに料理うまいな」

「ありがとうございます」

照れたように、千来は笑った。



そのとき、油がはねた。

「あつっ…!」

はねた油は千来の指にかかり、それに驚いた千来ははしを持っていた手を引っ込めてしまった。


はしが、空中に放り出された。

それを受け止めようとしたら、その前に千来の手が出された。


「あっつ…」


はしでコロッケを揚げていたので、当然それも高温なわけで。


はっと我に返った俺は、千来の腕を掴んで水道の蛇口をひねった。

水が、千来の手を濡らす。


「いっ…」

痛さに顔を歪め、引こうとする千来の手を掴んで流水に当てたままにする。


「バカ!なんで俺をかばった!」

「そんなの無意識ですよ!…僕が火傷してもそんなに影響ないけど、北斗くんが火傷したらどうするんですか!」


強気な千来に、思わずひきかけた。

「だからってな…!……ごめんな」

「なんで、北斗くんが謝るんですか。北斗くんは悪くないことで謝りすぎです」


千来は苦笑した。


それにつられて、俺もそうかな、と笑ってしまった。