夏休みの魔法


レッスンが終わったのは、12時過ぎだった。



「お腹すいた~!ご飯食べようぜ」

「え、陽汰お弁当だっけ?」

「コンビニだけどな」


みんなでまるくなって昼ご飯を広げる。



みんなほとんどコンビニだった。

「わー、千来ちゃんのおいしそ~。お母さんの手作り?」

空くんがくりくりした目で聞いてくる。

「いえ、自分で作りました」

「「「「「え!?」」」」」


蒼以外の声がきれーにハモった。


まぁ、蒼はあたしが多少は料理できること知ってるし…。


「え、ちょっ、完成度高すぎでしょ!」

「でも自己紹介で料理できるって言ってたっけ!?」


「あの…落ち着いてください」


みんなアワアワし過ぎだよ!

そんなに驚くこと!?




「…千来」

北斗くんに声をかけられた。

「はい?」



「……卵焼き、ちょーだい?」


ちょっ…!!!!

首をかしげて聞くとか、可愛すぎるんですけど!?

「は、はい。どうぞ」


ヤバい、平常心、平常心…。


自分でそう念じながら、卵焼きを一つ北斗くんにあげようと、はしでつまむ。

「あー」


見ると、北斗くんは口を開けていた。



……食べさせろ、と?


ウソでしょ!?

いや、状況的にそういうシチュエーションだけど!!

え、む、ムリだって!


頬が赤くなるのが分かる。

熱いよ…!



「…ふっ…あっははは!!やっぱ千来は百面相だ!」



…なぜか北斗くんに笑われるし。

みんなも笑ってるし。


「な、なんで笑うんですかぁ!」

「だって、あーんくらいで赤くなるとか…!しかも俺男なのに!」


「わ、分かりました!僕だってあーんくらいできます!!バカにしないでください!」

「してないって!…ほら」


あーっと口を開ける北斗くんに、卵焼きをポイッと放り込む。