夏休みの魔法


その後、つき合わせてごめんとだけ言って、あたしたちはレッスンに戻った。








レッスンを再開した北斗くんは、少し吹っ切れた表情をしていた。



…あたしには、まだ溜め込んでいるようにも思えた。





さっき、かけようと思えば、何だっていえたはずなのに。


「木崎さんに憧れて、って言ってたじゃないですか」

「誰かを笑顔にしたかったんじゃないんですか?」



…そんな言葉、きっと北斗くんは望んでない。

さっきこんなこと言ってたら、きっと悲しそうに、でもそれを悟られないように笑うんだ。



いつだって、他人に迷惑をかけたがらない。

なんでも一人でどうにかしようとする。



…それに限界があるなんてことを、知らずに。








「千来!」


先生に声をかけられて、はっとした。


見ると、COLORFULはみんなであわせて踊っていて、先生はこっちに近づいてきていた。



「ありがとな、北斗のこと。あいつ、最近調子悪いみたいだからさ…。人に弱さを見せたがらないやつだから、実際よくわからないんだけど」


先生はちょっと困ったように笑った。



「…僕に、何かできたらいいんですけど」


「何言ってんだよ。お前についていってもらって、正解だった。表情が、明るくなった」




…違うんです、先生。


北斗くんは、そう見せるのがうまいだけなんです。






本当は……。