夏休みの魔法


「…そんな風に、考えたこともなかった」

初めて気づかされたといったふうに、切なそうに笑った。


「…俺、さ。木崎さんに憧れてこの事務所入った」


木崎、という単語にドキッとした。



「テレビの中で堂々としてて、すごく輝いて見えた」


ぽつりぽつりと、北斗くんは話す。


「事務所に入ったのは二年前。その時も悩んでた。俺が芸能界で、やっていけるのかって。大切な人たちに迷惑かけないかって」



そうだ、二年前もあなたは悩んでいた。

憧れの人がいるんだ、でも不安なんだ。


そう言ってた。



「その時は、救ってくれた人がいた。でも、今は…これは、俺自身の問題なんだ。メンバーに迷惑かけるわけにはいかない」



顔をあげて、あたしのほうを見る。


その瞳には、強い意志が宿っていた。