夏休みの魔法


しばらく、じっと見つめ合っていた。


北斗くんのほうが先に目をそらして、ふっと笑った。




「…ありがとう」



その笑みは、やわらかくて、優しくて。


いつもどこかひいているように見える、テレビの北斗くんの笑顔じゃなかった。


本当の、本心からの笑顔。




「…俺さ、ずっと後悔してんの。もう二年くらい前になるのに、その間、ずっと」


何を後悔してるのかは言わなかった。

だから、あたしも聞かなかった。


「もう叶わないって分かってんのに、なのにずっと、後悔してる。…俺、女々しいよな」




「…僕は、北斗くんが何を後悔してるのかは知りません」


北斗くんは、ただ黙って話を聞いてくれてる。

「でも、後悔してるっていうのは、それだけそのことを強く思ってるってことだと思うんです」


あたしは、今後悔してるのかは分からない。

それでも、言えることは。



「強く思ってて、消えてほしくないから、悪くもそうやって心に残るんじゃないですか?」