夏休みの魔法


北斗くんは早歩きで階段をのぼり、屋上へ出た。

足速すぎて、小走りでもついていくのが大変だった。




あたしも屋上に入った。

北斗くんは、屋上にあるちょっとした座れる場所に座っていた。

バタンと閉まるドア。


どうしよう、どうしたらいいんだろう。


こんな状況で…声をかけるべきなんだろうか、それとも、何も言わずにいればいいんだろうか。


分からずにオロオロしていたら、意外にも北斗くんから口を開いた。



「…ごめんな」



こっちを見ずに、俯きながら、その言葉が紡ぎ出された。


何を謝られているのか分からなくて、返事が出来なかった。


すると、北斗くんがもう一度ごめん、と言った。




「…こんな中途半端じゃダメだって、分かってる。昨日入ったばっかの千来にも迷惑かけて…。先輩、失格だよな」



いや、先輩とも呼べないか。


そう言って、彼は自嘲気味に笑った。




「…そんなことない!」



そう答えたのは、ほとんど反射的だった。