「あの、ひかないでくださいね」
意を決したように、木崎くんは切り出した。
「大丈夫だよ、趣味は違って当たり前だし」
同じだったら逆につまらない。
すると彼は驚いた顔をして、でも安心したように笑った。
「趣味は、趣味というかできることは…女装です…。えっと、メイクとかできるので、やるときには役立てたらいいなと、思い、ます…」
恥ずかしそうに、顔を真っ赤にさせて話した。
女装が、趣味…?
「あはははははっ!っ、趣味女装とか…!ヤバい、おもしろすぎ!」
俺はまた笑い出してしまった。
「…でも、いいと思うよ、そういう志!…っ、君おもしろい!!」
「北斗、いい加減笑いをおさめろ」
「いーじゃんっ、こんな子なかなかいないって!」
「まぁ、確かに?」
「木崎千来くん、ね。覚えておく!」
木崎くんは恥ずかしそうに笑った。
笑うと、やっぱり似ていた。
女の子なのに。
木崎くんは、男の子なのに。
さっきまで忘れようとしていたのに、この笑顔を見ると。
思い出してしまった…。

