夏休みの魔法


「……うそ…」


「嘘じゃない。本当に、好きなんだよ」


もう一度伝えれば、優来は力が抜けたようにするりと俺の腕から抜けて、座り込んだ。


「うそだ…だって、あたしは、北斗くんを…」


「…騙されてたのは許せないと思った。でもそれ以上に、お前が好きなんだ」


俺は優来の前にしゃがみ、俯いていた顔をあげさせた。


泣きそうな、優来の顔。


何度も見てきた、それなのに、泣いたところは一度しか見たことがない。


「…好きだよ。2年前も、そう思ってた」


「2年前って…」


「ああ、覚えてる。優来と会ったことも、一番最初のファンになってあげるって言ってくれたことも」


そう言ったら、優来の大きな瞳から涙が溢れ出した。


「…ごめんな、ひどいことばっかり言って。もう辛い思いなんてさせないから。…俺と、付き合ってくれますか?」


「そんなのっ…!あたしなんかでよければ…」


目をこすりながら答える優来。


「なんか、じゃないよ。優来がいいんだよ。…俺のこと、なんでも分かってくれる」


そんな優来が、この上なく愛おしい。


「…だから、これからもよろしくね?」


「あたしこそっ…。よろしくお願いします…!」


泣きながら笑う、その顔がこんなにも綺麗だなんて、知らなかった。