夏休みの魔法


………それからも、たくさん話した。


でも何をそんなに話したのか、忘れてしまった。


ただ覚えているのは、彼女が強い瞳をするたびにドキドキしていたこと。


そして、笑顔がとてもまぶしかったこと。





彼女と別れてから、不思議でしょうがなかった。


初対面の人になんであんなにしゃべったんだろう。


あの強い瞳が怖かったから?


見透かされそうで、恐ろしかったから?


…いや、一番の理由は、惹かれたから。


強い瞳がとてもまぶしくて。


その強い意志がとてもうらやましくて。


…とても、欲しかったんだ。


瞳だけじゃない、考え方、微笑み。


すべてが、あの日の俺を魅了した。





…あの日以来、彼女と会うことはなかった。


もう一度会えたら、また話したいと思った。


近状報告、他愛ないこと、なんでもよかった。


ただ、もう一度…会いたかった。





…会えたのに。


ようやく分かったのに。


遅すぎるなんて、もう後悔したくなくて。







俺はただ走った。


伝えたい想い、それだけに駆られて。