「…いいね。素直さが出てて、背伸びしていない、北斗の言葉だ。これは自分で持っていて。題名も決めてもらわないといけないし」
返された紙を、もう一度眺める。
「ありがとうございます」
「こんな詩を書くくらいだ、もう知っているんだろう?」
「何をですか?」
「…あの子のこと」
「っ…。千来、ですか」
できるだけ動揺を隠そうと努めた。
「そう。…悪かったね、黙っていて」
「いえ…。あの、一つ、いいですか」
「なんだ?」
思い切って、聞いてみよう。
「蒼と千来…どういう関係ですか?」
「…本来なら、本人から聞くべきことだが…きっと彼女は言わないだろうからね。…幼なじみだよ」
「幼なじみ…?」
「そう、ただの幼なじみ。でも、蒼は彼女をとても大切に思っているよ。男女としてではなく、家族として、だけど」
社長がそんな風に言うってことは…
「…気づいてます?」
「なにをだい?」
…まったく、気づいているくせに、あくまでしらを切るつもりか。
大人って、よく分からない。