夏休みの魔法


みんなと別れてから、あたしはSTART事務所に来ていた。


コンコンとノックしたのは、社長室。


「どうぞ」


「失礼します」


ドアを開けて入ると、机の向こうに社長が座っていた。


「夏休みの間、ありがとうございました」


「お父さんと分かり合えたみたいで、よかったよ」


「はい」


「…どうやら、それだけではないようだけど」


「はい。…たくさん、たくさん学びました。大切な人たちに、出逢えました」


「それはよかった。…最初、君のお母さんが頼んできたときには驚いたけどね」


社長が立ち上がり、あたしの前まで歩いてきた。


「君にとって良い経験だっただろう。お疲れさま」


右手を差し出され、あたしはその手を握った。


「ありがとうございました」





これで、あたしの夏休みは終わった。





…自分で決めたことなのに、胸が痛い。


もう一度、会いたかった、かな…。