ぽんっと、誰かに肩を叩かれた。
それでも、頭を上げることなんてできなかった。
「…顔、上げろ」
かかった声は、蒼のものだった。
恐る恐る、顔を上げた。
そしたら、いきなり抱きしめられた。
「……よく、頑張ったな」
「蒼…」
呟いてしまってからはっとした。
蒼のことは、伏せたのに。
「……蒼は、知ってたんだ?」
尋ねられた、夕哉くんの低い声。
「ちがっ…」
「ああ、知ってたよ。社長もな」
蒼は夕哉くんの目をしっかり見た。
「ふぅん…。自分からバラすなんてね」
冷たい瞳、冷たい声。
「どうやって責任とるつもり?」
「おい、夕哉」
「水月は黙って。…ねぇ蒼。メンバー騙してたんだよ?それ相応の覚悟、してたんだよね」
椅子から立ち上がって、ゆっくりと蒼に近づく。
「…ああ」
「どんな覚悟?」
「……芸能界を辞める」
「…へぇ、それはおもしろいね」
…凍った微笑み。
「待ってください、蒼は何も悪くないんです!あたしのやることに、付き合ってくれただけで…!」
嫌だ、嫌だ。
蒼には、何も危害を加えなくないのに。

